米国のNorth Carolina State University(NCSU:ノースカロライナ州立大学)は、GaN(窒化ガリウム)材料の新たなプロセス技術を開発したと発表した。この技術を適用すれば、高エネルギー材料中の欠陥を通常の1/1000まで低減でき、材料の純度を高められるという。
NCSUの研究チームは、「プロセス技術をこの新方式に移行させれば、GaNで形成する発光ダイオード(LED)やパワートランジスタなどのデバイスの出力を2倍に高められる」と主張する。
今回の技術は、NCSUの電気工学部の教授であるSalah Bedair氏と材料科学部の教授であるNadia El-Masry氏が開発したものだ。GaN薄膜中、サファイア基板との境界付近の領域に、意図的に空隙(ボイド)を形成する。すると、GaN薄膜中に通常は数千個のオーダーで存在する欠陥が、これらのボイドに吸い込まれる。その結果、GaN薄膜の純度が高まるので、その薄膜を使ったデバイスの出力が増大するという仕組みだ。
Bedair氏は、「ボイドは、境界付近に存在する欠陥や転位に対して吸水口のような役割りを果たすと同時に、格子不整合に対して伸縮ジョイントのように機能する」と説明する。同氏は、「デバイスに与える影響については、現在測定を進めているところだ。この技術を適用すれば、LEDのみならずパワートランジスタなど他のGaNデバイスについても、性能や信頼性を高められると考えている」と述べた。
Bedair氏によれば、この技術は偶然発見されたものだという。同氏の研究チームに所属する大学院生のPavel Frajtag氏が、マスクレスの誘導結合型反応性イオンエッチングを用いていた際に、バルク成長したGaN薄膜中にナノワイヤーが形成されたと訴えてきた。Bedair氏はFrajtag氏に、エピタキシャル成長を利用してナノワイヤーを取り除くよう指示した。すると、ボイドが形成されて、転位をトラッピングする効果が生まれ、GaN薄膜の純度が1000倍に高まったという。
実験では、厚さ約2μmのGaN薄膜中に、直径0.25μmの楕円体状のボイドを形成した。その結果、ボイドを取り囲む薄膜中の欠陥が 1/1000に低減したという。ボイド自体がGaN薄膜の性能を低下させることはなく、反対に、出力が2倍に高まると予測される結果をもたらした。
研究チームは現在、この材料のさらなる特性抽出に取り組んでいる他、この技術によってGaNデバイスの出力が高まることを証明するために、LEDおよびその他のデバイスをこのプロセス技術を適用して製作しているという。