やさしいあかり グリーン照明 LED
第7回:可視光LEDの応用
2011年は、LEDに並ぶ光源として有機ELが注目されそうです。山形県のルミオテックが昨年からサンプル出荷を開始した他、カネカやコニカミノルタ、三菱化学、パナソニック電工などが、2011年度の製品化を目指しています。さらに、福岡県にもイー・エル・テクノというベンチャー企業が設立されるなど、その勢いは止まりません。LEDがいよいよ普及期に入ろうかという現在、有機ELも数年後に同じような道を辿り、普及していくと予感させられます。それでは、LEDについてわかりやすく解説します。今回は可視光LEDがどのように応用されているかを解説します。
ディスプレイ
可視光のLEDは、可視光LEDは、太陽光に強く照らされても屋外視認性に優れており、これまでセグメント表示機やマトリクス表示機など多くの製品に使われてきました。マトリクス表示機の中で、最も多く目にするのが、駅のホームの発車時刻や行き先などを表示する案内板ではないでしょうか。新しい車両では、行先表示にも使われています。現在、LEDの最大市場はというと、液晶パネルのバックライトです。TVからPC用モニタ、携帯電話までサイズに関わらず、LEDが光源に採用されるようになりました。TV向けは、数年前まではCCFL(冷陰極管)という蛍光管が主流でしたが、水銀レス、低消費電力などの観点からLEDに変わりつつあります。
TV向けでは、ソニーが2004年に発表した「QUALIA 005」が世界初のLEDバックライト搭載製品でした。QUALIAは、贅の限りを尽くした超最高級AV機器をコンセプトとしたシリーズで、005ではバックライトにRGB(赤・緑・青)3色のLEDを独立して用いることにより、色再現領域を拡大し、色の純度も向上させました。これにより、従来の方式では再現できなかった、熟成されたワインの深紅や萌える木々の深緑といった微妙な色をより本物に近い色で実現しました。価格は40インチが80万円、46インチが105万円。現在の機種と比較すると10倍近くに相当します。
その後、シャープが2008年にRGB LEDを用いた「XS」シリーズを発売しました。圧倒的な高画質と画期的な薄型構造、優れた環境性能がアピールポイントで、画質では、従来では難しかった黒表現によりテレビコントラスト100万:1以上、色再現範囲をNTSC比150%。しかも、ディスプレイ部は最薄部で2.28cm。また、年間消費電力量は、294kWh/年(65V型)に抑え、2007年モデル比で約26%削減。RGB LEDを利用することにより、色再現範囲が大きく拡大するだけでなく、直下型というパネルの裏面全体にLEDを配置する方法により、LEDの明るさを調節することで引き締まった黒表現を実現しています。通常、液晶パネルは、バックライトを常に一定の明るさで点灯させ、この光をTFT(薄膜トランジスタ)のシャッターを開閉させて映像を創りだしています。このため、黒い映像を表示している際にシャッターを閉めても光が漏れてしまい、黒浮きするという問題がありました。これをXSシリーズでは、光源の明るさをコントロールすることで解決しています。
しかし、現在はRGB LEDを利用した液晶テレビは現存していません。高画質ですが、製造コスト、価格やニーズなどが影響しているようです。現在の主流は白色LEDを利用したTVで、多くの機種がサイドエッジ型バックライトを採用しています。これまでは輝度の問題から、TVはパネルの背後から近い距離から照らす直下型が多かったのですが、TV筐体の薄型化・狭額縁化などのデザインや消費電力の低減、コスト削減、導光板の技術的進歩など複数の要因からパネルの周りに光源を配置するサイドエッジ型へと変わっていきました。
そのような中、白色LEDを用いた高画質化技術への取り組みが進んでいます。2010年5月、シャープはこれまでRGB3原色だったディスプレ イにY(黄色)加えたRGBYの4原色技術を搭載した「AQUOS クアトロン 3D」LVシリーズを発表しました。混色した白色のバランスを見直し、サブピクセルサイズもそれぞれ変化させました。これにより、小判や金貨の「金の色」、楽器の金属色、ヒマワリの黄色といった鮮やかな黄色系の色を実現しています。
照明器具
従来の電球や蛍光灯を置き換えるため、LED電球や直管型タイプのLEDなどが発売されています。また、長寿命でメンテナンスに手間がかからないことから街灯や防犯灯なども利用されるケースが増えてきました。この反面、内蔵する電源部から発生する電磁波や、LEDドライバによる周波数帯が人体に影響を及ぼすなどの課題もあります。また、製品自体の設置されている環境によっても輝度の低下や短寿命に繋がります。照明には直接照らすものの他に間接照明があります。一般家庭や店内、オフィス、公共施設、自動車や電車の車内などで、LEDは製品サイズが小さく収納しやすいため利用されるケースが増えています。発熱が小さく街路樹への負担が少ないため、クリスマスのイルミネーションでも今や主役になるまでになりました。
LEDの発光効率は100lm/Wを達成し、開発ロードマップでは2012年までに250lm/Wに達する見通しです。今後、さらに明るく省エネの照明が開発されていくことでしょう。
植物工場
植物は光合成をして成長していく訳ですが、これは葉緑素のクロロフィルが光を吸収することで反応しています。植物工場ではこれを利用して、成長期間を短縮させたり、適切な出荷時期を計算するなど、計画的な生産が行われています。屋内で育てるため天候の影響も心配ありません。植物の成分も光や肥料によって制御できるので、好みにあった味に調節することもできます。光熱費や運送費などの変動するコストを抜きに考えれば、安定した価格で提供できるのが最大の強みです。出荷先はレストランなどの店舗だけでなく、自宅に配送するサービスなども登場してきています。植物を育成する上では、赤色の660nm波長が有効と言われています。450nm近辺の青色も形態形成や光屈折性に有効です。植物工場では、これらのピーク波長を持つLEDを組み合わせ、波長成分を制御しながら照らします。従来からの光源とLEDを組み合せて、さらなる効果を引き出す新光源の開発なども積極的に行われています。
[上原清志,LEDLED]